2015年12月21日月曜日

やっぱり期待通りだった 「植物はすごい 七不思議篇」

まだ読んでもいないのに絶対のお勧めと紹介した田中治著「植物はすごい 七不思議篇」(中公新書2328)はやっぱり期待どおりでした。
「植物はすごい」 絶対のお勧めです

7つの植物の「不思議」について「へえぇー」と思わせてくれます。7つとはサクラ、アサガオ、ゴーヤ、トマト、トウモロコシ、イチゴ、チューリップです。その7つの植物ごとに7つの不思議。7×7=49の不思議が書かれているのです。

私たち北海道の人間にも関心のある「なぜ、北海道では、ウメとサクラが同じころに咲くのか?」という項目もあります。ちょっと紹介しましょう。
ふしぎの四 なぜ、北海道では、ウメとサクラが同じころに咲くのか?
“開花前線”の不思議とは?
北海道では、五月はじめのゴールデン・ウィークのころ、ウメとサクラがほぼいっしょに咲きます。ウメとサクラの開花のコラボレーション(共同演出)が楽しめると、北海道の観光がアピールされることもあります。そのような観光案内を自にすると、「なぜ、北海道では、ウメとサクラが同じころに咲くのだろうか」?という素朴な“ふしぎ” が浮かびます。
サクラの開花前線もウメの開花前線も、暖かい地域から北上していきます。九州や四国の暖かい地域では、ウメの花は1月下旬に咲きはじめ、サクラの花は3月下旬に咲きはじめます。そのため、それらの地域では、ウメとサクラの開花の時期は約2ヵ月間離れています。
それに対し、関西地方では、ウメは2月中旬から咲きはじめ、サクラは3月下旬から4月上旬に咲きます。ですから、ウメとサクラの開花の時期は、約1ヵ離れています。関東地方では、ウメとサクラの開花の時期は、ほぼ1ヵ月少し離れています。暖かい九州や四国の場合と比べると、ウメとサクラの開花時期の差は少し縮まっています
青森県や秋田県、北海道など寒い地方では、ウメの花は4月下旬に咲き、ほとんど間隔を置かずに、サクラが咲きはじめます。北海道では5月の初旬にウメとサクラがいっしょに咲くこともあります。
九州から日本列島を北に行くほど、ウメとサクラの開花時期は接近してくるのです。この現象に対し、2つの可能性が考えられます。1つ目は、北に行くほど、桜の開花が早まって、ウメの開花に追いつくことです。2つ目は、北に行くほど、ウメの開花が遅れて、サクラの開花に追いつかれることです。
春に開花するウメは、サクラと同じように、ツボミを前年の秋までにつくります。そして、秋に、冬を越すための硬い芽である越冬芽をつくり、その中にツボミを包み込みます。芽は冬の寒さを体感して目覚め、春の暖かさに反応して開花します。これは、サクラの場合と同じ性質です。ですからウメもサクラも「春に暖かくなると、花を咲かせる」といわれます。
しかし、ウメとサクラが暖かさに反応して花を咲かせる性質には、大きな違いがあるのです。そのため、ウメとサクラの開花前線の北上のしかたに違いが生じるのです。どのように違うのでしょうか。
なぜ、サクラは追いつけるのか?
九州では、ウメの花は1月下旬に咲き、サクラの花は3月下旬に咲きます。青森県や北海道では、ウメとサクラが同じころに咲きます。その原因を考えましょう。暖かい地域として鹿児島市、寒い地方として北海道の札幌市、その中間の地域として京都市を選び、ウメとサクラが花咲くころの平均気温を比較してみます
鹿児島市では、ウメの花が咲きはじめる1月下旬の平均気温は6-9度です。京都市や札幌市でも、ウメの花が咲くころの平均気温はほぼ6-9度です。ということは、ウメの花は、鹿児島市、京都市、札幌市と北上しても、ほぼ同じ気温になると咲いていることになります。ウメの花は、全国的に、ほぼ同じ気温で咲いているのです。ウメの開花前線は、暖かさが北上するのと同じように北上しているのです
それに対し、サクラの花が咲きはじめる3月下旬の平均気温は、鹿児島市で13度前後、京都市で11-12度です。札幌市では、サクラの花が咲きはじめる4月下旬の平均気温は9-10度です。京都市でサクラの花が咲くときの気温は鹿児島市で咲くときの気温よりも低く、さらに、札幌市でサクラの花が咲くときの気温は京都市よりも低いのです。北に行くほど、サクラが開花する時期の平均気温は低くなっているのです。
つまり、「春に暖かくなると、花を咲かせる」といわれますが、ウメは同じ温度で開花しているのです。ですから、ウメの開花が遅れて追いつかれるのではなく、サクラの開花前線がスピードをあげて追いついてくるのです。
サクラが開花する暖かさは、北ヘ行くほど、低くなっているのです。ということは、「サクラの開花前線のスピードが、北上するほど速くなっている」ということであり、「サクラがウメの開花に追いついている」といえます。
「目覚めが良い」といわれるサクラでは、冬の寒さのきびしさは、花が咲くために必要な“暖かさ” に影響するのです。冬の寒さがきびしいほど、暖かさの程度が低くても、花が咲くということです。
ウメもサクラも、「春に暖かくなると咲く」といわれますが、ウメは開花する暖かさが全国で同じなのに対し、サクラは地方により違うのです。札幌市では、鹿児島市や京都市ほど気温が上がらなくても、サクラは開花するのです。そのため、4月下旬に花が咲きはじめるウメに続いて、間隔を置かずに、サクラの花は咲くのです。
「目覚めが良い」という現象の一つは、「寒さがきびしいほど、開花の準備が早くに整い、開花できる暖かい温度に出会うと、すぐに反応できる」ということです。もう一つの現象は、「開花できる“暖かさ”の程度に影響する」ということです。花が咲く“暖かさ”が、冬の寒さのきびしさによって変わるのです。「目覚めが良い」と、“暖かさ”の程度が低くても、花が咲くのです。
※田中治著「植物はすごい 七不思議篇」(中公新書2328)から引用
すごいですね。やっぱり期待どおりです。これが49の「不思議」のうちのひとつ、絶対にお勧めです。

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