2015年12月29日火曜日

本の表紙に中空土偶の写真 『北海道の歴史がわかる本』の魅力 

中空土偶といえば、函館市の南茅部地域で出土した函館市民にはよく知られている縄文時代の国宝です。この中空土偶の写真が表紙に掲載されている、桑原真人・川上淳著『北海道の歴史がわかる本』(亜瑠西社、2008年)は、楽しく北海道の歴史がわかる本です。


この本の特徴ですが、北海道の歴史を約3万年前の旧石器時代から21世紀の現在まで、全体を52のトピックで構成しています。ひとつひとつが1回完結のドラマみたいになっているので、「読み終わったあ」という気分を52回味わえます。

私はこの本で紹介されたところを時間があるときにせっせと通っています。今金町のピリカ旧石器文化館とか、続縄文時代の余市町のフゴッペ洞窟とか、網走市にあるオホーツク人の遺跡であるモヨロ貝塚館とか、上ノ国町の中世の遺跡、勝山館とか、新ひだか町のシャクシャインの記念館、夷酋列像展、樺戸集治監があった月形町の月形樺戸博物館など、ずいぶん楽しませてもらいました。

もうひとつこの本の特徴は和人史観から解放されていることです。「はじめに」のところで次のように書かれています。
北海道の歴史は、近代以降の「開拓の歴史」に矮小化されるほど、短くて新しいわけではない。何万年も前から人々がこの地に住み、今日に至るまで営々と歴史を刻んできている。また、北海道の人々は孤立していたり、停滞していたわけではない。古くから周辺地域の人々と活発な交易・交流を繰り返してきたのである。そういう意味でも、北海道の歴史は、日本史や世界史の中に正当に位置づけられなければならないと思う。
北海道の歴史の初心者が読んでもいいし、学んだことのある人にとっても味のある一冊。おすすめです。

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