2016年1月29日金曜日

韓国バンブー英語 黒田龍之介「ことばは変わる」を読んで②

黒田龍之介「ことばは変わる」を読んで、言語の接触によって生まれるピジンやクレオールについて前の投稿で書きましたが、ピジンの例として「韓国バンブー英語」というのが引用・紹介されています。
Taksan years ago, skoshi Cinderella-san lived in hootchie with sisters, poor little Cinderella-san ketchee no fun, have no social life. Always washee-washee, scrubee-scrubee, make chop-chop.
このピジンには「韓国バンプー英語 Korean Bamboo English」という名称がつけられている。これは1950年代の朝鮮戦争の頃、アメリカ兵と韓国人の間で使われたという。ここに挙がっている例は、アメリカ兵が語ったものである。
内容は、「シンデレラ物語」。朝鮮戦争の頃にアメリカ兵と韓国人の間で、どうして「シンデレラ物語」が語られたのか、そしてそれがどうして記録されたのか、いろいろ不思議である。
全体的には英語が基盤になっている。語順はSVOであり、前置詞も使われている。yearsやsistersでは、複数を示すsがきちんとついている。
だが語彙は韓国語というより、日本語がたくさん混ざってるところが注目である。つまり、アメリカ人が韓国人相手に日本語を混ぜたピジンを使っているわけだ。このアメリカ兵は日本に滞在した経験があるらしい。
日本語を知っているのは語り手だけではないはず。この話を聴いている韓国人もまた、日本語の語彙が分かることが前提でなければおかしい。アメリカ人と韓国人が日本語混じりのピジンを使っているとは、なんともユニークな光景である。
なかには分かりにくい語彙もある。hootchieは「うち」つまり「家」のことであろう。ketchee はcatch 、washee はwash、scrubeeはscrubだから「ゴシゴシこする」 という意味らしい。それを繰り返しているのは、その動作の反復を表すためである。chop-chop「切り刻む」も同じ。
Cinderellasanがついているのも面白い。日本語の「さん」 であり、名前に付ける敬称。そのCinderella-sanskoshiが付いている。これは「小さい」「幼い」というつもりなのであろう。少ない語彙に多くの意味を持たせている例に違いない。
不思議なピシンだ。アメリカ人ならふつうの英語でこれを語ることも充分できるはずである。それなのにわざわざ、こういう風変わりなことば遣いをする。これはひとえに、相手に分かってもらうためではないか。人はこんなにも、コミュニケーションに対する意欲が強い。
要約というよりもほとんど引用になりましたが、ピジンとはどういうものなのか、面白く理解できました。

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