Hさんは8年前に家族とともに帰国し、現在函館に住んでいます。彼は「私はまだ日本語がうまくないけれど」と断りながら、それでもよくわかる日本語で「私は『大地の子』をみるたびに、涙があふれてしかたがないんです」と僕にいいました。主人公の陸一心の運命と自分の人生が重なりあうのでしょう。
『大地の子』をみて流す涙には3つの色があると僕は思います。侵略戦争がもたらした悲劇への涙、「文化大革命」という名のもとに行なわれた迫害への涙、そしてそのなかでも理性に生きた人々への感動の涙です。(『こんにちは佳大です』 1996.6.23号)
追記 Hさんもまた日本人であることから文革時に迫害を受けたそうです。三角帽をかぶせらされ、首から看板を吊るされたと。その後、復権したとのことで、そのことを記した文書を大切そうに私にみせてくれました。私はこのミニエッセイのつづきを考えていたのですが、その後「こんにちは佳大です」のコーナーが終了となり、いまでは何を書こうとしていたのか思い出すことができません。
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